ハードウィック・ホール Hardwick Hall
今年の最初の訪問地はニューステッド・アビーだ。
かの詩人バイロンの住まいであったという。バイロンについては”人を恋うる歌”で「バイロン、ハイネの熱なきも 石を抱きて野にうたう 芭蕉のさびをよろこばず」
のフレーズで知るのみだ。バイロンはおろか芭蕉さえ左程知っているとはいえない。しかし、私の旅の目的は詩人の研究ではない。
良いガーデンがあると聞けば、訪ねるのみだ。
パーキングから暫く歩くと芝生の中に懐かしい赤いポストが経っている。ここには小さなバス停もあった。正にカントリーサイドの一景だ。
その右手に広壮な邸宅が現れたが、"Private Stable Block"の札が立っている。邸宅に見えるがStableとは信じられない。こんなところがB&Bであれば最高だ。
Stable Blockの脇には湖が水を湛えている。気温が上がり沢山の水鳥が湖畔の木陰に休んでいる。
その先の左手に目指すニューステッド・アビーが見えてきた。ランセットアーチの廃墟が懐かしい。
このアビーは12世紀に始まり16世紀にバイロン家の所有となったという。ランセットアーチの廃墟はアビーの西門にあたり13世紀の建造物だ。
詩人のバイロンは第6代男爵で19世紀当初のわずか6年だけをここで過ごしたらしい。そして彼は1818年にこのプロパティーを手放しており、
紆余曲折あって現在はノッティンガムシャーの所有で、広さは300エーカー(37万坪)に及ぶ。
建物の南側の芝の広場では結婚式でも行われるのか広大なテントが張られ、食料などが運び込まれている(写真上左から2枚目)。
広場を挟んで、1820年に造られたという大きな湖(Garden Lake 写真下左)が静かに水を湛えている。
広場や湖の周りは灌木や常緑樹、落葉樹で覆われていて、オータムカラーに染まりつつある。
ガーデンマップに従い歩く。シダ園(Fernery)も豊かな樹木に囲まれている(写真上右から2枚目)。
南の端に日本庭園(Japanese Garden)がある。1899年から造られたもので、日本の風景を模したつもりらしい。石灯籠が多用され、
石橋や踏み石など石と水路、樹木で構成されている。東屋はぼろぼろだ。これが日本庭園かと問われたら、素直に頷けないだろう(写真上左から2枚目)。
続いてVenetia's Garden、American Gardenと現れる。植栽などがそれぞれの国の特性を表しているのだろうが、良く分からない。
American GardenとRose Gardenの間にパーゴラの残骸らしき柱が残っている(写真上右から2枚目)。復活させたら面白いのに。
その脇にPrivateのハウスがある。ガーデナーの住まいと思われるが、その庭のトピアリーが面白い蛇の形だ(写真上右)。赤い目はテラコッタだ。
ローズガーデン(Rose Garden)は1辺が80mはあろうかという四角形の壁に囲まれている。田の字に通路があり、中央に噴水、壁際にはボーダーが走る。 通路に仕切られた4つのガーデンはエバーグリーンの芝の中にコニファーや灌木、宿根草と共にバラが植栽されている。 思いがけず多くの秋バラが咲いているが、そのバランスが控えめで爽やかさを覚える。スペースのあるガーデンならではのことだ。
各所に素晴らしいオーナメントがある。金網を編みこんだ"Weave Feature"だ。ガーデンで作業をするガーデナーを模ったものだ。
花に囲まれ休憩するガーデナーも良い。実にリアルに作られているが、真似できないこともないと思い、細部まで真剣に頭に刻む。
通路で擦れ違うカップルや壁際のベンチで寛ぐご婦人との挨拶も爽やかだ。
ローズガーデンの並びが小さなウォールドガーデン(Small Walled Garden)だ。壁際はボーダーで中央は柘植のヘッジで仕切られた2つの整形式ガーデンになっている。 ヘッジの中の植栽はハーブが多く使われている。ここのも柳の枝か何かの蔓で編まれたオーナメントが置かれている。 石やブロンズのように恒久性はないが、手作り感があって面白い。元は中世の修道院の養魚池だったという。
次はグレートガーデン(Great Garden)だ。アビーの東の外れに一段高く築かれたテラスガーデンでオランダ式のガーデンのようだ。
間にある"Eagle pond"に移るアビーの姿が美しい眺めだ。この池は別名"Mirror Pond"と呼ばれるらしい。謂い得て妙だ。
テラスの2ヶ所にある像は上半身が人間下で半身が馬の半人半獣・サチュロス(Satyrs)だ。1784 年のものだという。良く理解出来ない。
ここにも面白いトピアリーがあった。良く手入れされている。
グレートガーデンの木蔭の芝の中に色々なキノコが生えている。おとぎ話の絵本の世界のようだ。小人が出てきそうな雰囲気でもある。
ガーデンの北面は高い壁に沿った150mものボーダー(Herbaceous borders)だ。ここもテラス式に高くなっているから日当たりは抜群だ。 壁はバラや蔦などつる性の植物が程良く繁っている。ボーダーには大型の宿根草やグラス類が見事に繁茂している。豊富な植栽だ。 夏の草花の花殻なども美しく感じられるのはなぜだろうか? 全体の色遣いにセンスを感じる。
このガーデンで最も有名なスパニッシュ・ガーデン(Spanish Garden)に巡って来た。幾何学模様のBox Hedgesで縁どられたパルテア(Parterre)だ。
中心の井戸のデザインがスペインのオリジナルから倣っていることからこのガーデンの名前になったという。
Box Hedgesの中は草花やハーブが植栽されている。今一番色鮮やかなのはベゴニアとゼラニウムの植え込みだ。もう少し高い位置から見られたらさぞかし素晴らしいだろう。
最後は"French Garden"だがそれらしくは見えない(写真下右)。ご多分に漏れず"White Lady"なるものも出没するとの噂だが、お目に掛れなかった。
Address | Nottingham, Nottinghamshire NG15 8NA |
Telephone | 01623 455900 |
Web Site | Newstead Abbey |
オープンの日・時間や入場料は Web Site あるいは
Gardens Finder
Gardens Guideで確認ください。
「旅行記」もご覧ください。